百人一首


百人一首には苦い思い出がある。高校の1年生の時のことだ・・・。

確か冬休みだったと思うが、「百人一首のテスト(口頭試問)をするから暗唱せよ」という宿題が出された。まず「何で覚えなきゃならないんだよ〜」と思ったのが悪夢の始まりで、「こんなもん覚えたってどうなるんだ? 覚えるより、じっくり鑑賞するもんだろうが〜」と、その宿題を出した張本人(古典の先生)が担任だったこともあって、最初から反発し、まるっきり覚えようとせず、まあ何とかなるだろうと、たかをくくっていた。今になって思えば、この種のものを覚えるのが苦手だという意識があり、それが嫌で逃げていただけだった。

ところが、休みがあけていざテストという時になって、初めて自分の愚かさを実感することになる。ほとんどの生徒がきっちり覚えてきていて、当てられてもスラスラと暗唱できるのだ。
「えっ、うっそ〜! みんな完璧じゃない? どうしよう・・・」
先生が最初を読み上げて、それに続けて最後まで暗唱しなければならない。どれを先生が読むか、10首くらいなら何とか覚えられても、全部の中からとなれば、とうてい付け焼き刃で対処できるほど、生易しいものではない。案の定「再テスト」。後日改めて試験を受けることになった。仲間が、数人はいたと思う。

数日後、再テストの日がやってきた。自分では覚えたつもりでも、最初にいい加減だったツケがまわってきて、思うように頭に残らない。覚えてもすぐに忘れてしまい、ただただ焦るばかり。再テストの結果は・・・みごと「不合格!」。職員室に呼び出されてのテストを受けることになった。

2〜3日経って、職員室へ行く日がやってきた。さすがにこの時になると必死だ。「おじゃまします。百人一首を言いに来ました」と言って職員室に入ると、全員の先生の目がこっちを向く。何とも恥ずかしく、情けなかったことは、今もはっきり覚えている。全部で10首、完璧に答えられたら合格だったと思う。1回目のチャレンジ。3首めくらいで言えなくなり、あっさり「再々テスト」へ。

再々テスト・・・。いったい誰が受けるの? すでにお互いに探り合える余裕もなく、もう誰もいないんじゃないかと焦るばかり。
緊張感がしだいに高まり、声が震えるのが自分でもわかった。1首終わるごとに汗が噴き出し、頭の中が空っぽになりそうで、どこか別世界にいる気分だった。

1首、また1首と、やっとの思いで答えていく。そして、何とか無事に10首を言うことができ、晴れて合格!この時ばかりは完全に負けた。悔しいけど、先生に「ありがとうございました」と言っている自分がいた。最初の<威勢のいい自分>はいったいどこに行ってしまったのか・・・。

今、思い出しても恥ずかしくなる、若かりし頃の「エエカッコしい」の失敗談だ。


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