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  「高校時代に何をしたか」が、問われる時代に・・・


 「高校時代、何をしていたかを重視したい・・・」。最近の就職面接で、有力企業の人事担当者がそう言っている。事実、多くの企業では、高校時代に何か特色ある行動をしていたかどうかを、詳しくたずねている。その中に、見るべき何かがあると、断然、就職に有利に働くのも事実なのだ。
 日本青年研究所の日米比較調査によると、アメリカの高校生は高校時代のボランティア活動に強い関心を示すが、日本ではほとんど無関心だという。これには訳があって、アメリカの大学入試や就職では、その人物の学習資質だけではなく、人物の特徴が重視されるからで、日本ではそうなっていなかったからだ。
 しかし、この「日本ではそうなっていなかった」というのが、最近、どうも変わりつつある。大学入試では、ペーパーテストだけでなく、人物を見ようとしつつあるし、企業では、はっきり特性を見ようとしている。『金太郎アメ』(どこを切っても金太郎…。つまり、これといった持ち味、個性のない人間)ではダメだと、どの企業でも当然のことのように言うようになったのである。時代を先取りするなら、金太郎アメではないことを証明する“何か”が必要なのだ。その有力手段の一つが「高校時代に何をしたか」ということになる。
 アメリカの高校では、名称は各校で違うものの、『シルバー賞クラブ』といったようなものがあるらしい。何かで優秀なことをした生徒にはシルバー賞を与え、生涯、たとえば『マンハーセットハイスクール・シルバーメンバー』なんていう栄誉がついてまわる。この栄誉は、その人物に一生ついてまわる仕組みになっており、生きていく上で、生涯大きなプラスになるという。
 黒人の一人の生徒は、牧師の助手をしていた。熱心なクリスチャンである彼が、ついに教会で人の悩みを聞き、相談にものるようになった。まさにシルバー賞ものである。また、一人の女生徒は、学校が終わるとディケアセンター(保育園)で子供たちと遊んだ。一人の男子生徒は、近くの少年バスケットボールチームのコーチをして、優勝させた。こういったことがシルバー賞に値するのである。
 「しかし・・・」と、アメリカの大学の先生たちは言った。「次々に社会奉仕をすればいいといったものではないだろう」。生徒の中には、ありとあらゆる奉仕活動に手を染め、いわゆる“点数稼ぎ”のためだけに活動する者も出てきたからである。これでは、勉強だけに全精力を使う“ガリ勉”と同じである。これでは意味がない。アメリカの大学では、反省が生まれた。
 いったい「高校時代に何かをする」とは、どういうことをいうのだろうか。どんな意義をもつのだろうか。たとえば、奉仕活動をとってみても、確かに、それをやろうとすることは立派なことには違いない。しかし、もう一つ忘れてはならないことは、それをどれだけ続けたか、ということではないのだろうか。
 一つのことを、どれだけ長く続けたかは、“忍耐・努力”を意味する。奉仕の心は大切だが、忍耐や我慢、努力も重要な「何か」である。こうして、アメリカの大学では、いろんなことをたくさんすることではなく、一つのことをどれだけ長く続けたかが、「何か」の内容になってきた。
 ひとくちに“奉仕”といっても、一日や二日のことなら、「勉強になった」「考えさせられた」「いい経験になった」で終わってしまう。しかし、それを長く続けるとなると、価値のある行動として、客観的事実からの評価ができる。つまり、ペーパーテスト以外の有効な人物評価の手段となり得るのである。
 かつて、漫才の好きな日本の若者が、子供たちを集めて、紙芝居と漫才旅行をしたことがあった。超一流の企業の多くが、この若者を欲しがったのは言うまでもない。
 それぞれの教科の学習も、もちろん大切だ。しかし、それだけが勉強ではない。この高校時代に、何か“プラスアルファ”をもった人間になれるような努力をすることも、欠かせない勉強の一つだろう。
 幸い、みなさんには「クラブ活動」という大きな武器がある。高校3年間を通じて、とことん打ち込み、自分を賭けるものがあることは、とても素晴らしいことだと思う。「精一杯やってほしい!」。担任として、何よりもまずそれを思う。
 しかし、実を言うと、やはりそれだけでは寂しいのだ。まだ、高校生活が始まったばかりのみなさんにこんなことを言うのは早すぎるだろうが、勉強やクラブ活動以外にも「何か」、できれば周囲の人のために自分が継続してできることを、ぜひみつけてほしい。
 欲張りな要求かもしれないが、そういうことがあるかどうかで、勉強やクラブ活動を通して得た貴重な経験が、その後の自分にどれだけ生きてくるかが大きく変わってくる。今、すぐに実行できなくていい。とりあえず、心のどこかにそういう気持ちを持っていてほしいと思う。